Idée Capricieuses ~元イギリス大学日本担当官の気まぐれブログ~

元イギリス大学日本担当官のブログです。 イギリス留学やサセックス大学、大学のある街ブライトン、趣味であるHR/HMや留学中に体験した奇妙な経験など思いついたことを気まぐれのままに書いていくブログです。

想像を超える限りないパワー! イギリスで見た/聞いた珍事その⑦~ストライキ編~

皆さん、こんにちは!

サセックス大学日本担当官です。

今日は最近よく耳にするイギリス国内のストライキについてお話していきたいと思います。

ストライキとは?

最近よく話題にあがるストライキですが、イギリスではどこでも頻繁にストライキが起こります。

もっとも、イギリスだけでなく、アメリカやカナダ、フランスなどでも頻繁にストライキが起こるので、外国では良くある事です。

まず、ストライキと言うのは、労働者が労働条件の改善・維持などの要求を貫徹するため、集団的に労務の提供を拒否すること。 ストライキを行う権利は、労働基本権の1つである「団体行動権」(日本国憲法第28条)の一環として、労働者に保障されている。とのこと

出典:ベリーベスト法律事務所

上記をもう少し嚙み砕いて説明すれば、給料が安いや残業が多い!休日がない!みたいな労働者の労働環境・条件に対しての不満を改善を訴えるために、集団で仕事を放棄すると言うことです。

イギリスだとストライキは日常茶飯事の光景で、イギリスの法律でも基本的人権の一部として扱われるため、社会で受け入れられています。

日本でも憲法に組み込まれているみたいですが、近年ではほとんど見かけませんね。

留学したことがある人なら一度は経験するであろうストライキですが、イギリスでは大学・学校機関はもちろんのこと、郵便局や電車、空港、医療機関など社会のインフラも度々ストライキを起こします。

元々、ストライキは文化として社会に根付いてはいましたが、ここ近年では新型コロナウィルスやウクライナ侵攻の影響で経済の悪化・物価上昇による生活費向上を理由に、それに対する賃金上昇を求めるストライキを行使する団体の数や頻度が以前に比べて、特に増えている様子です。

ストライキにより、日常生活に影響がでることも多々ありますので、外国で生活する以上、不便な環境に慣れる必要があります。

ちなみに、イギリスでは上記インフラ系も含めて、公務員もストライキができますが、日本の法律では公務員のストライキは認められていないようです。

なんでも、”国家公務員は国民全体の奉仕者として勤務することが求められているので、争議行為(ストライキ)を行うことは禁止されています。争議行為は、公務の停廃をもたらし、国民全体の共同利益に重大な影響を及ぼすか、又はそのおそれがあるから”とのこと。

なので、日本では警察官や市役所職員、公立教育機関で働いている教師などの公務員の方々はそもそも法的にストライキは認められておらず、もし実行すれば、降格や減給、懲戒処分など罰を受けるらしいです。

一方、イギリス法ではさすがに警察官や刑務所の職員などのストライキは治安維持の関係上、法的に認められてはいませんが、消防士や役所職員、裁判所職員などはストライキ可能みたいです。この辺りは日本と似ているようで結構違いますね~

前説が少々長くなってしまいましたが、ここからはイギリスで起こるストライキの種類について、簡単にお話していきます。

鉄道

ストライキの代表と言えば電車ですね 笑

よっぽど労働条件に対しての不満があるのか、経済悪化や物価が上昇する以前からイギリスの鉄道会社によるストライキの回数は異常と言えるくらい多いです 笑

運営会社によって変わってきますが、大体ストライキだけで合計1ヶ月くらい休んでいるんじゃないか?って思うくらい起こります。

鉄道がストライキを起こすと、当然、交通機関が麻痺します。観光目的でどこかへ出かけるのであれば、日にちをずらしたり・キャンセルするくらいで済みますが、もし大事な用事ゆえに外出が必要だった際にストライキで運休してしまうと大変です。

相手は時期や状況を問わず、問答無用でストライキを行使してきます。丁度2023年1月年始もイギリスの大学では学期末テスト期間に入るにもかかわらず、当たり前のようにストライキが起こってましたね。日本で言うと入試時期に鉄道がストライキを起こすみたいなものです。

戸愚呂弟
出典: 幽☆遊☆白書 ©冨樫義博/集英社

ストライキ決行予定日は事前に各鉄道会社のウェブサイトやニュースなどで発表されるので、定期的に目を通しておけば、今後のストライキの予定を知っておくことができますが、鉄道会社のウェブサイトを定期的に確認する人はごくわずかだと思いますし、ニュースを見ない人だと当日まで知る術はないでしょう。

どこか旅行に出かけようと準備していたにもかかわらず、当日駅に向かった際にストライキで運休していることを知ったら、計画を白紙に戻す必要も出てくると思いますので、鉄道関係は旅程を決める前にある程度調べておくと無難です。

鉄道がストライキを起こすとバスやタクシー停留所に人が溢れかえることがよくあります。日本で言うところのJR鉄道が運休した際に見かける帰宅難民者による行列ととても似てます。どこに行っても皆考えることは同じです。

もっとも、イギリスの鉄道は整備不良や故障、人員不足による遅延・運休も結構起こるので、遅延・運休に関してはJRの比ではないんですけどね・・・

こうなると、長距離用バスはほぼ満席になっている可能性が高いため、運悪くストライキと被ってしまった場合は頑張ってタクシーを捕まえるか素直に諦めましょう。

学校

鉄道に続いて、よくストライキが起こる場所と言えば学校でしょうか。

教授や職員たちの賃金向および労働条件の改善を目的として、イギリス国内大学ではどうやら2018年から大規模なストライキを毎年行っている様子です。2018年以前からもちょくちょくストライキしてましたけどね 笑

学校関係者によるストライキはUniversity and College Union(UCU)に加盟しているメンバーによって行われています。

UCUにはおおよそ12万人ほどのメンバーが加盟しており、構成員も教授や准教授たちから研究者・大学スタッフ・図書館職員の人たちなど様々です。

このように大学・教育機関でお仕事をしている人たちのほとんどは加盟しているため、ユニオンでのストライキが起こる際はイギリス全土で起こります。

先程の電車と違って、教授・スタッフ個人によってストライキの影響が大きいクラス・学部とほとんど影響のないクラス・学部があるなど、所属している学部やコースによって大きく変わってきます。これはサセックス大学のみならず、他のイギリス大学でも同様ですね。

加えて、ストライキによって惜しくもなくなってしまった授業の補講やその後の対応も各スタッフ・学部の裁量にゆだねられているため、一概にストライキ=完全に授業が消えるっといったわけではないですが、だからと言ってストライキの影響が確実に保証される訳でもないのが歯がゆいところですね。

私が聞いたエピソードとしては、サセックス大学のとある学部だとストライキ後に影響を受けた各学生へ別途連絡し、スキップしたクラス数に応じて、一部の授業料を返金したり、補講を設けると言った話もある一方で、特に何も対応しない学部もあったとのこと。

鉄道のような運休するか否かの状況とは異なり、大学施設のすべてが閉鎖されることはほとんどないですが、各大学の各部署ごとによってストライキの影響の差が大きく違う点が教育機関で起こるストライキの特徴と言えるでしょう。

空港・船場

お次は空港と船場ですね。タイミング次第では、かなり大きな影響を受けると思います。

空港や船場のすべてのサービスを閉鎖する訳ではないですが、ざっと挙げるだけで下記みたいな感じです。

  1. 入国審査を担当している部署がストライキを起こし、入国管理局が大パニック

  2. 荷物運搬部署がストライキを起こした結果、到着出発の荷物運搬に大幅な遅延

  3. 航空会社がストライキを起こし、その日の全便が欠航

  4. 保安検査部署がストライキを起こし、欠員による保安検査場の大幅な遅延

船場であれば、近隣国を訪れる程度でしか利用しないと思うので、日本人留学生がストライキに遭遇する機会はほとんど無いかと思いますが、空港は旅行も含めて、渡英・帰国、国外旅行など利用する頻度が高いので影響は大きいです。

空港のストライキは大小問わず起こっており、イギリス国内最大級のハブ空港であるHeathrow 空港も問答無用でその洗礼を受けます。

気を付けていただきたい点としては、空港だとどこかの部署がストライキを起こした場合、空港全体に影響を及ぼす可能性が高いです。

例えば、上記で挙げた保安検査スタッフがストライキを実行すると空港は大混雑となり、保安検査場を潜り抜けるだけでも1時間以上待たされる可能性があります。Heathrow空港のような大規模な空港だとそれ以上待ち時間がかかるかもしれません。

最悪の場合、長蛇の列で保安検査場を通り抜けることができず、予定していた便に間に合わない可能性も十分考えられます。

この様なケースだと、決して航空会社がストライキをしたわけではないため、出発時刻に間に合わないのは渡航者による落ち度として処理され、※航空券の変更や払い戻しの対応を受け付けてくれない可能性が高いです。

※航空券購入の際に、無料での便の変更や直前キャンセルでの一部返金サービスなど補償が付いているチケットを購入できます。通常のものより割高ですが、万が一の保険を掛けることができます。詳細は各航空会社へお問い合わせください。

なお、通常の航空券は悪天候による欠航や航空会社のトラブルなど不可抗力的な要因による損害はたいがい補償してくれます。

補償と言っても座席が空いている便への変更などがほとんどで返金対応してくれる航空会社はあまり多くないと思います。ご留意ください。

飛行機に乗り遅れたり、便自体が欠航になったりすると本来予定していた計画が水の泡になりますし、旅行先の滞在先ホテルのキャンセルや予定の大幅な変更などで手間と費用だけが一方的に嵩む可能性もあります。キャンセルは直前だと全額返金はされませんし、そうなると非常にガッカリしますね・・・

個人的な意見だと、金銭的にも精神的も一番影響力があるのは空港でのストライキだと思います。

たった今、一瞬にして旅行者の陽気が消えました
出典: 幽☆遊☆白書 ©冨樫義博/集英社

郵便局

続いてご紹介するのは郵便局です。

イギリスの郵便局(Royal MailとParcel Forceの両方)も度々ストライキを起こしています。

集荷担当部署と配達の遅延から郵便局の閉鎖など、郵便物サービス全体に影響があるのは言うまでもありません。

イギリスの郵便局員でCommunication Workers Union(CWU)に加盟している人員はストライキを行使できます。

ちなみに、Communication Workers Unionは郵便局員だけでなく、電話・インターネット会社など通信事業者の従業員も加盟しています。

通信事業者によるストライキに関しては、仮に起こったとしてもインターネットそのものが止まる訳ではないので個人への直接的な影響はほとんどないかと思います。

配達の遅延は確かに不便ですが、国際宅配サービスを使用しない人にとってはあまり関係のない話でしょう。

逆に、日本またはイギリスから何か重要な書類の送付が必要なシチュエーションだと少し注意が必要ですね。

回避する方法は特にないですが、国際郵便を利用する際に事前にストライキの情報について公式ウェブサイトから確認しておくと良いでしょう。

ごみ収集業者

最後にちょこっと紹介するのは、ごみ収集業者によるストライキです。

ちょうど2023年3月半ばにフランスのパリでも同様のストライキが起こっており、ちょっとしたニュースになってましたね。

パリ

ごみ収集業者のストライキでごみなどが回収されずに放置され続けた結果、ごみ箱からごみが溢れる街の写真がとても衝撃的です。このストライキはワールドワイドに報道されていたと記憶してます。(当時、日本では報道されていないかもしれませんが)

この写真はエディンバラですが、イギリス各地でこのようなストライキがたまに起こっています。

お店のゴミは言うまでもないですが、家庭のゴミも1~2日もすれば、すぐにゴミ袋が満杯になり外にあるごみ箱に捨てに行くかと思いますが、誰も処理してくれないため、街がゴミで溢れ返ります。

こういうのを見ると、日本のごみ収集業者の方々のありがたさが身にしみてわかりますね。

まとめ

以上、イギリス国内のストライキ事例をいくつかピックアップしてご紹介しました。

ここで挙げたのは一部でして、民間企業や公的機関を含めれば、大小問わず、毎年たくさんのストライキが起こっています。

冒頭でも申し上げましたが、ストライキは世界各国で起こりますので、国問わず、海外で生活する以上は避けられないものだと思っておいたほうが良いでしょう。

我々サービス利用者にとってはサービスが制限されるので不便極まりないですが、ストライキは労働者の権利のため誰にも止めることはできません。大人しく受け入れ、暖かく見守ってあげましょう。

できることとしては、事前にいつ・どの部署・団体がストライキを起こすのか案内されるので、サービスを利用する前に調べておくと安心ですね。

そして、外国に住む以上、頻繁なストライキは文化違いとして受け入れ、各方面でのストライキが起きても動じない穏やかな心を持って生活すると良いでしょう。

もしストライキに遭遇したら、その日は厄日だったと割り切って考えることも重要です
出典: 幽☆遊☆白書 ©冨樫義博/集英社

今週はここまで!お読みいただきありがとうございました!